in-職(いんしょく)ハイパーの“飲食の戦士たち”に株式会社ゴダック 代表取締役 荒谷公彦氏登場。
天性の舌によって、天与の味覚が育まれていく。
ところで、荒谷と「食」との関係はいつ頃、生まれたのだろうか。母が始めたレストランもその一つだろう。「母は天性の舌を持っていた」と荒谷はいう。お世辞ではなく、母の料理食べたさに、連日、店の前に行列ができた。荒谷家の食卓の料理も、頬が落ちるほどうまかったに違いない。「少ない量でも、美味しいもの」が、荒谷家の食卓のルールだった。
天性の舌と母の愛情によって、荒谷の天与の味覚が覚醒していく。ちなみに、日本でも荒谷ほど味覚に鋭敏な人間もいないだろう。それは、これから後、荒谷が世界各地から仕入れる食材によっても証明されている。
一方、こうした安定した生活も長くは続かなかった。開店して5年後、荒谷が中学に上がるときに閉店。客のツケの多くが焦げ付いてしまったからだ。店を失うのは同時に住まいを失うことを意味していた。もう一度、引越しが始まった。親子が窮屈だが、なんとか暮らすことのできる小さな家だ。荒谷の言葉を借りれば、「最初の家では何十とあった水道の蛇口が、ついに1つになってしまった」とのことだ。「1円の大事さ」が骨身に染みたのもこの頃である。
このように生活が苦しくなっても、心まで貧しくはならなかったのは、強く、朗らかに活きる両親の姿があったからだろう。赤貧のなかで荒谷は、初めて勉強に向き合うようになる。都立高校を経て、東京水産大学(現、東京海洋大学)に入学。卒業後、海外を知りたいと、食品の貿易商社に入社。入社2年目にして、そのチャンスが訪れた。 ・・・。
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